『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践』は、2013年に英治出版株式会社から発行されました。著者のロバートキーガンさんは、ハーバード大学教育学大学院の教授をされておられます。30年あまり研究・執筆活動を通じて、人が成人以降も心理面で成長し続けることは可能であり、現代ニーズにこたえるためにもそれが不可欠であるという認識を広めてこられました。本書も、まさにその答えがもりだくさんに詰め込まれています。
自己変革、組織変革を5に評価しています。本書を忠実に実施することで、達成されたデータがあります。しかし、本当に実施しようとすると正直ハードルはかなり高いです。
自己変革から始めていくことをお勧めします。
「自分自身が成長したい」、「部下から尊敬される上司になりたい」、「チームの質を向上させたい」と考えたことはありませんか?
向上心のある方は、仕事をしていく中で必ずと言っていいほど抱く悩みではないかと思います。解決しようと思うと難しいですよね?やってはみるものの変化がみられず、途中で挫折してしまいます。
本気で変えたい人向けに解説していきます。
- なぜ人と組織が変わらなければならないのか理解できる
- 変わるために必要な課題の種類が分かる
- 課題の全体像をイメージできるようになる
本書は、かなりボリュームがあるので、本記事では組織の変革については内容を省きます。
本書のもくじ
序章 個人や組織は本当に変われるのか?
第1部 “変われない”本当の理由
第1章 人の知性に関する新事実
第2章 問題をあぶり出す免疫マップ
第3章 組織の「不安」に向き合う
第2部 変革に成功した人たち
第4章 さまざまな組織が抱える悩み
第5章 なぜ部下に任せられないのか?
第6章 自分をおさえることができるか?
第7章 うまくコミュニケーションが取れないチーム
第3部 変革を実現するプロセス
第8章 変わるために必要な3つの要素
第9書 診断 「変われない原因」を突き止める
第10章 克服 新しい知性を手に入れる
第11章 組織を変える
終章 成長を促すリーダーシップ
本記事の流れとしては、まず、なぜ変われないのかを説明します。その上で、変わる必要性、変わるための要素、原因のつきとめる手順を解説していきます。
それでは始めていきましょう!
これだけは押さえておきたい事前知識
なぜ変われないのか?
人はなぜ変われないのでしょうか?それには3つの理由があるそうです。
- どこを変えればよいのかわからない
- リーダーが部下が変わると思えていない
- リーダー自身が変われると思っていない
1.に関しては、本人が心から変わりたいと望んでいるにもかかわらず、どうすれば変えることができるのか?その原因が何なのか理解できていないことが多いです。原因の見つけ方に関しては、後で説明していきます。
2.は、人を変えることは本当に難しいですよね?むしろ、自分を変えることすらできないのに他人をかえることなんて、不可能では?と思ってしまいます。
3.は、人間は変化を嫌い、習慣を好む傾向にあります。そのため、自分は変えることはできると頭では分かっているものの、実際に変えようと努力をしても続かないことはよくあります。
その事実を肯定するおどろくべき報告があります。
「必要だと分かっていても85%の人は行動に起こさない」そうです。例えそれが、自分の寿命を縮めるような生活習慣であってもだそうです。
知性とは?
知性と似た言葉として、知能や知識がありますので、まずはその違いを説明します。
知性とは、知恵とも言い換えることができ、答えのない問いの答えを探し続ける能力
知能とは、答えのある問いに対して時間をかけずに正しい答えを導き出す能力
知識とは、書物から学べ、言葉として表すことができるもの
一般的に、頭が良いと評価される指標として、知能と知識を用いることが多いですね。知性=知能および知識ではありません。また、知性=IQでもありません。
最近まで、知性は体の発達と同じように20代で成長が止まると思われていました。この記事を読まれている方も同じ印象ではないでしょうか?
研究結果によって、新事実が判明しました。
それは、
年齢と知性の関係をグラフにすると、緩やかな右肩上がりの曲線を描ける。すなわり全体的な傾向としては、人間の知性は、大人になってからも年齢を重ねるにつれて向上していく。
引用元:なぜ人と組織は変われないのか:P27.28
知性は高齢になるまで、成長を続けることが分かりました。ただし、同じ年齢であっても知性の差は大きいそうです。また、高い知性になるほど人数は少なくなります。では、次に知性のレベルを3つの段階に分類して説明します。
自分軸という柱がないため、他者の評価がそのまま自己評価として受け入れる考え方です。そのため、協調性は高く、受け身のため自己主張が少なくなります。上司の価値観の支配下にあります。
自分軸があるため、他者の価値観に左右されなくなります。向上心を持ち、自発性が高く、自己主張が強くなります。自己中心の傾向にはありますが、自身が必要と判断すれば他者の意見も取り入れることができます。
自分軸を持っているのはもちろんですが、自分の枠組を通してだけでなく、その枠組みそのものを見れるようになります。自分の考えが発展途上であることを認識できており、限界を理解しようとする姿勢が生まれます。
あなたは、どの知性の段階にあるか考えてみてはどうですか?ちなみに、自己変容型知性に到達している人は1%に満たないみたいですよ…環境重農型知性よりもさらに下の段階もあります。
求められる役割
日本では、わたしの親世代は肉体労働で仕事をしている割合が多く、経済も右肩上がりに成長していました。現在は、グローバル化が進行し、目まぐるしいスピードで変化が起きています。肉体労働中心から知的労働中心に変わりました。その結果、これまで以上に高度な教育とスキルが求められるようになりました。
要するに、上司の言う通りに体を動かして働くだけではダメということです。環境順応型知性では、今後必要とされなくなると言い換えることができます。
指示待ち人間でできる仕事はAIが代行するようになります。
自己主導型以上の知性のレベルがみなさんに求められる時代に変化しているということです!
「なぜ本書の人と組織は変われないのか」の「変わる」とは知性のレベルを1段階上げると言い換えることができます。
知性のレベルアップが「求められる役割」です!
課題
課題には2種類あります。
- 技術的な課題
- 適応を要する課題
例えを用いて解説します。
ふじだいが中間管理職とします。そのうち一人の部下の教育を任されています。部下を成長させる上での2種類の課題に分けて説明するとどうなりますか?
「技術的な課題」では、どんな教え方をすれば部下が成長するのか?部下の良い部分を見つけて正のフィードバックを行います。また、問題点を見つけて、その解決策を導き出していきます。
「適応を要する課題」では、
「環境順応型」の場合、周囲の人からの評価が気になる特徴があります。人からどう見られているのかという視点で部下を教育していきます。教育方針の柱がなので悩んだり、上手くいかないときは、ふらふらと横道にそれることになります。ただし、他者の信用を失いたくないため、認められるように努力します。他者からアドバイスを受けてその通りに教育します。
「自己主導型」の場合、教育方針の柱を持っています。そのため、横道にそれることはなく、自分の考えを通して部下を教育することができます。他者の意見に流されることなく、必要だと自分が判断した場合は、必要な要素のみ取り入れることができます。他者の意見に左右されるのではなく、活用することができます。
「自己変容型」の場合、教育方針の柱を持っており、それが完ぺきではないことを理解しています。他者から指摘された場合にも自分自身が否定されたと感じることはありません。主観ではなく、客観的にみることができるようになります。
変わるためのプロセス
変わるために必要な3つの要素
- 心の底
- 頭脳とハート
- 手
「心の底」とは、
理屈抜きの強い欲求を抱く必要がある。理性ではなく本能を、いわば「心の底」を揺さぶるべきなのだ。
引用元:なぜ人と組織は変われないのかP277
心の底から想いを捻出しないといけないんですね。
「頭脳とハート」とは、
思考と感情のスペースを押し広げ、適応を要する課題を前にしても内面の葛藤と矛盾にさいなまれないための選択肢を作り出すことだ。
引用元:なぜ人と組織は変われないのかP283
頭脳=思考、ハート=感情です。新しい考え方をすることで新しい感情が湧きます。一方で新しい感情を抱くと新しい考え方がひらめきます。今までのやり方でもある程度の成果を出すことができたとします。今以上の成果を求めるためには、新たな思考と感情が必要です。
「手」とは、
既存の免疫機能と衝突する行動を意識的に取ってはじめて――言ってみれば、実際に「手」を動かしてはじめて―-変革が可能になる。
引用元:なぜ人と組織は変われないのかP287
手=行動です。行動しなければ変化はありません。新たな行動を起こすと変化がみられます。その変化に対して今まで通りの対処をすると成長に繋がりません。変化に対して考え方や感じ方を変える必要があります。そのためには、土台をなす基本的な思考様式を変えなくてはなりません。
本当に自分を変えたいのであれば、上記の3つ要素が必要となります。さらに、周囲の人に公表することでサポートも得られますし、やらざる負えなくなります。
原因をつきとめる
本題の全体像を説明していきます。ここでは、全体像を「免疫マップ」と言い換えられています。免疫マップとは、
改善目標を妨げる要因
阻害行動の背中を押し、改善目標と衝突する
免疫マップ全体を支える信念
短い表現でまとめると上記のようになります。このstepの流れで要点のみ説明していきます。
step1 改善目標
課題の一部もしくは全部を現在よりもずっと上手にできるようになるために自分が最も改善すべき点はどこですか?
自分にとって重要
周りのだれかにとって重要
自分自身の努力が必要
「何をやめたいか」ではなく「なにをしたいか」を考える。
step2 阻害行動
具体的である
心理状態でなく行動
率直である
改善目標の足を引っ張る内容
step3 裏の目標
あなたが「くそっ!」、「ちくしょう!」と不安や恐怖の感情を抱くことは何ですか?
裏の目標を達成しようとすると阻害行動をとらなければならない
表と裏の目標の間でジレンマに陥っていることを実感する
step4 強力な固定観念
裏の目標を生み出すもの
正しいと思っていること
本記事で、最も重要なポイントを一言で説明します。
まとめると、固定観念が裏の目標を生み出し、その裏の目標が阻害行動を突き動かし、その阻害行動が改善目標を妨げている。ということ。
結論、改善目標を挙げて努力するだけでは変われません。
本書の魅力
原因を突き止めた後は、実行しなければなりません。その解説は本書を参考にしてください。今回は個人レベルの解説のため、集団レベルの変革は本書にかいてあります。その他、内容を本当に理解しようと思えば多くの実例(大学の教授会、森林局、教育委員会、コンサルティング会社、大学病院の外来病棟など)を読み込む必要があります。本書はたくさんの実例を分かりやすく説明されています(内容そのものが複雑なため、ふじだいにはレベルが高かったですが…)。
感想
年の初めに「〇〇できるようになる。」と目標を立てたこともありました。年末に振り返ると目標すら「何だったっけ?」程度の思いで成長せずしない日々を過ごしていました。「改善目標がなぜ達成できないのか?」「自分の阻害行動は何なのか?」まで考えることができる人も中にはいると思います。それでも改善目標を達成できる可能性は低いです。なぜならば、人は無意識下で「裏の目標」に向かって熱心に取り組んでいるからです。裏の目標が何なのかを知ることができてはじめて「本当の課題」が明確になります。明確になったとしても課題を解決するには並大抵の努力では挫折してしまいます。
本当に自分を変えたい方、組織を変えたい方、変えようと思って努力したことがあるけど上手くいかなかった方。ぜひ、本書を熟読することをお勧めします。
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